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遠きにありて

by ヤー子

ふるさとは遠きにありて思ふもの

あれは誰の詩だったか

故郷に帰れない人の詩だったように思う

「『ふるさと』ってどこだと思いますか?」

ある会合でふいに問われた。

生まれは大阪、そこから広島、北九州という話の流れからだった。
「どこ」がふるさとかとは、たぶん聞かれたことのない質問で。

いっとき、逡巡し
「大阪ですね」と答えたら
少しだけ意外そうな視線が返ってきた。

12歳まで住んだ東大阪。
Facebookや年賀状で
幼友達とだけごく細いつながりが残る
今では帰ることのなくなった
それでも、はじまりの町。
自分の原点。

よいことも悪いこともあった。
悪いことのほうが多かったかもしれないが
そっちはもう霞みがかっている。

距離をあけて、時間をあけてしまえば
輪郭や手触りがはっきりしなくなるから
だからか、ちょうどいい。

当事者でなくなったあの町は
ぼんやり明るく
頭に浮かんでくれる。
まだ少し苦いけど、なつかしさを帯びて。


ふるさとはどこかと尋ねてきた人にも
いつか同じことを聞いてみたい。
その時は、どんな話が聞けるのだろうか。


Photo by HARI


ヤー子
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